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美容師として今思うこと

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美容師として今思うこと

生き残りが難しい美容業界の現実

最初に美容業界を取り巻く環境=今の市場背景をご説明したいと思います。


2016年厚生労働省発表のデータによりますと、全国の美容室数が約24000件、美容師数 約49000人、新規出店数約13000件と、美容師数、美容室店舗数は過去最高の数値を示しています。しかしながら、新規オープンから1年以内の閉店が約60%、5年10年続くケースは奇跡的に近い事例で、MINXは創業から34年ですから、ごくまれなケースとも言えます。さらにオープンから3年以内の閉店は90%を超え、晴れて独立オープンしたお店も生き残りが大変難しい時代になっています。


ではなぜ閉店しまうのでしょうか?お客様が定着しない、新規のお客様の見込みがないなど、お客様の来店や定着による理由と、後継者不足、人材不足、広告費の負担増、経営への知識不足も大きな理由として挙げられます。そんな中、美容師自身の働き方も変化し、正社員雇用型だけでなく、業務委託形式のフリーランス型や、子育て世代による時短勤務などの多様化があり、これから先はもっと細分化されていくことが予想されます。フリーランス型の人はまだ全体の2割程度ですが、将来的には5割くらいに増えるとも言われています。


休みを利用して開催されるセミナーで学ぶ

美容師になるには、基本、高校卒業後に美容専門学校で2年間学んでサロンに入社し、約2~4年の時間をかけて様々な技術を習得して晴れてスタイリストデビューを果たします。


ここで問題になるのが、先ほど触れた、新規出店や働く環境において、どの美容室にもしっかりとした教育カリキュラムがあるわけではないという点です。そこで、自分のお店では学べない内容やトレンド、不足している部分を外部セミナーで学び、自分の知識や技術を向上させ、美容師としてのレベルを上げていきます。普段、自分が行っているサロンワークの答え合わせ的な意味合いもあります。開催日はほとんどがサロンの定休日に当たる月曜日か火曜日で、受講生の方はご自身の休みやサロンの休みを利用して参加されます。そうした中で参加される方は、かなりモチベーションが高い美容師さんと言えるでしょう。


セミナーの種類としては、カットやカラーなどの技術を学ぶ技術教育方セミナー、ウェブなどに掲載するヘアスタイルの写真の撮り方を学ぶフォトシュートセミナー、人材育成の仕方を学ぶ教育方セミナー、サロンの経営やブランディングを学ぶ経営型セミナー、美容専門学校生向けのセミナーなど様々な種類があり、全国で数多く開催されています。


経営セミナーとカット技術セミナーが今の主流

以前はカラー技術や、スタイリング技術、フォトシュートのセミナーが多かったのですが、最近は経営型セミナーとカット技術を学ぶセミナーが多くなってきました。


経営のノウハウや成功事例を学びたいという30代の若手オーナーさんが、経営型セミナーに積極的に参加する傾向にあります。また、美容師は技術職ですから、基礎ができていないとお客様を定着させることはできません。新規のお客様はハントしたり、集客サイトを使ったりしてある程度集めることができるのですが、定着させるには美容師の技術力が必要です。そこをしっかり勉強したいというニーズが増え、今改めてカットの重要性が注目を集め、カット技術セミナーも増えています。


最近は別々のサロンで経験を積んだ2~3人の美容師が集まって独立するケースも多く、それぞれのベーシック技術が異なるので、新しく入ってきた若いスタッフへの教育が不足するという事態もよく見受けられ、よりベーシックカットのセミナーが重要になっています。


自分の持っているものを美容師さんに伝えたい

セミナーの講師は、各分野の専門家の方の場合もありますが、美容師さんが講師を務める場合も数多くあります。


私は20代後半からセミナー講師をやらせていただいているのですが、やり始めた当初からずっと、自分たちが得てきた技術や考え方をより多くの美容師さんに知ってほしい、役に立ちたい、という想いを持ち続けています。自分の持っているものを同業者に伝えることに抵抗はありません。むしろMINXのありのままを伝え、情報を自分から出していくことによって新たな課題が見つかったり、人に伝えることによって気づくこともたくさんあります。


私は自分が講師を務めたセミナーの内容を、MINXのスタッフに朝礼やミーティングで話すこともあります。私が感じたことや、“こういうシステムがMINXにはあるのはいいことだから、がんばって”とか…。セミナー講師をやることによって、自分自身が成長しているという気がしています。人に伝えることによって自分の課題や弱みに気づくことができ、さらにそれを克服していくという目標を立てることができます。


受講生の方には、できるだけ多くの技術を学び取って、サロンに落とし込んでほしいですね。美容室は教育カリキュラムが整っていないと、とんでもないことになってしまいます。私はスタッフには、たとえMINXを辞めたとしても、将来ちゃんと美容師としてやっていけるカット技術を持ってほしいと思っています。


将来のために、基礎を身に付けなければいけない

僕の想いとは裏腹に、全国的にセミナー数や受講生の数は減少傾向にあります。SNSの普及によって地方の美容師さんも多くの情報を身近に拾える環境になったことも要因のひとつですが、最近の美容師さんは、美容師として成功するぞという考えよりも、適度に自分の時間がほしいと考える人が増えてきたことも原因のひとつではないかと思います。


それは決して悪い事とは思いません。セミナーは先ほどもご説明した通り、休みの日に開催されていることが多いので、ちゃんと休みは休んでもらわないと困るという会社側の労務的な問題でもあります。スター美容師を生み出すよりも、平均的な売上を達成できるようにみんなでがんばりましょうという考え方にも起因しているのかもしれません。でも、生涯、美容師を続けていくのであれば、勉強できる時に勉強して基本を身に着けておかなければいけません。自分の時間は、そのあとからでも作れるのです。


セミナー資料はパワポで自分で作ります

僕が一番最初にセミナー講師をやらせていただいた時は、僕個人への指名ではなく、会社から振っていただいた仕事でした。僕は雑誌の仕事もセミナーの仕事も絶対リピートさせるという、サロンワークと同様の考え方を持っているので、1回目は指名なしで仕事をいただきましたが、次回から必ず指名でいただけるような、いい内容の、受講生の方から評価され、喜んでいただけるようにしなければと思っていました。受講生はお客様ですからね。それでセミナーの仕事をどんどん増やしていきました。最初は原稿がなければ話せませんでしたが、最近は自分でパワポで資料作りもするので、資料作りをしながら話したい内容をまとめていきます。MINXの若いスタッフにもパワポの使い方を教えてあげたりします。美容師さんじゃないこともやってるんですよ(笑)。


資料は1回のセミナーで30~40ページは必要ですが、すべて自分で作ります。自分のセミナーの資料は自分で作るというのが社内で根付いているんです。中には僕の作った資料をそのまま印刷して欲しいという人もいますので、配布する場合もありますが、それではあまり覚えられません。もらってもパラパラめくって終わりです。いくら資料を見てもSNSを見ても、断片的にしか見えない部分があるからこそ、セミナーに来るとその人の肌感とか、想いを感じることができるんです。細かい所まで見ることができるというのがセミナーのいいところですね。


youtubeでうまく編集されていたとしても、実際目の前で見るのと、あとでウェブで見るのとでは全然違います。見る集中度が違うんです。セミナーに来るとあとで考えさせられることが色々あります。自分の“熱量”が上がる。明日からがんばろうというモチベーションアップにもなります。セミナーを受けた人がセミナーで学んだことを軸に、社内の改革に取り組んでくれることを願っています。


中国の美容師さんに向けてのセミナーが増えています

最近は中国の美容師さんに向けたセミナーが日本の美容師さん向けのセミナーよりも多いくらいに増えてきました。来日して受講していただく場合もあれば、僕たちが中国に出向くこともあります。中国の方向けだと通訳を介するので、内容的には日本の1/3くらいしか伝えられないのですが、MINXでは技術だけでなくマネージメントのセミナーなど、年間を通して数多くのセミナーを行っています。1カ月に2~3人は誰かが中国に行っているという状況です。資料も膨大で、100ページを超える時もあり、中国の美容師さんはまるごと資料を欲しいと言いますね。毎回、綿密な打ち合わせをして臨んでいます。


以前は日本でセミナー講師としての土台を作ってから海外でのセミナーを行うというのが基本でしたが、今はその逆で、まず海外デビューしてから日本です。現地でモデルも探します。日本みたいに事前にちゃんとモデルを手配して、というよりは、その場その場。トラブル対処法も身につきます(笑)。大抵のことでは焦らなくなりますね。結果として、人として大きくなれるんです。セミナーは自分が成長するためにやるものでもあるということを実感します。


カットで大切にしていることは?

自分の技術や知識、デザイン力。自分の中にあるベーシックを活かしながら、今のトレンドをくみ取って自分のスタイルに落とし込んでいかに崩すか。色々な方向からのデザインのアプローチは大切で、一般的なスタイルというよりは個性を重視してデザインを作っています。


デザイン力を高めるためには?

普段からデザインについて考えていること。トレンドに敏感になっているのもそうですが、デザインだけではなく、どう似合わせていくかが大事です。


カットの難しさ・大事な部分とは?

いい意味でも悪い意味でも、素材ありき。カットをする上で、素材を良く知ることがとても大事になってきます。素材に合わせて、どういう切り口、アプロ―チをしたらいいのか、最終的なデザインを考えた上でデザインをマッチさせていくことが難しいですね。


経験を積み上げていくことは?

年々上手くなっていると思うし、髪質、デザイン、人への対応力は確実に上がっていると思いますね。


優しくカットをする理由

お客様、モデルさんであっても、女性にとって髪の毛は大事なものです。その大切な物をカット、デザインさせて頂くので、大切に、やさしく扱うことが大切だと思います。


道具のこだわり

まず、切れ味がいいこと。そして、切れ味だけではなくて、なめらかに切れることは大事。

大切な素材を傷めないように、作りたいデザインを作りやすい道具を選ぶようにしています。

手の様に動く、自分の手でデザインしている感覚になれるもので、僕は同じものを何本も持っています。

質感、デザイン、抜け感を出すためには、どのはさみがいいか、デザインを作るためのセニング、シザーがあるので、使い分けは大切ですね。


サロンワークと撮影を両立する理由は?

撮影の仕事をやっていると、サロンワークの質が上がってきます。撮影で、ヘアの扱い方、見え方を学ぶことによって、細かいシルエットや質感を、より目線を変えてみることが出来るので、サロンワークの質もおのずと上がってきます。


また、撮影現場独特の空気感があるんですが、自分の仕事の進め方、カメラマンさん、クライアントさんへの気遣いなど、日々のサロンワークでも役に立つことが沢山あるので、サロンワークと撮影の両立はメリットしかないですね。


楽しさよりも美容師としての力をつけることが大事

最近は、利益追求だけに走ってしまうお店が多いような気がしています。最低賃金も上がっていますし、福利厚生もちゃんとしないといけません。たくさんの人を雇用して会社を作っていくことはもちろん大事ですが、利益至上主義になりすぎて教育に踏み込めてない部分があるのではないでしょうか。


目先の利益も大切だけれど、将来、若い子たちが困らないように、ずっと美容師を続けられるように基礎を身に付けさせてあげることが大事なのです。入社1年でデビューできたら、それは楽しいけれど力はつきません。かといって7年8年、アシスタントをやればいいというものでもないのですが、ちゃんと仕事ができるようにさせてあげるのが肝心です。楽しさよりも美容師としての実力をつけさせてあげることは、会社として取り組むべき一番大きなことだと思っています。


そのためにも僕はセミナー講師は今後も続けていきたいです。自分がセミナーをやることによってその人たちのためになるのであれば、ぜひやらせていただきたいと思っています。惜しみなく伝えていくからこそ、次がある――。これをモットーにこれからもセミナー講師を続けていければうれしいです。


美容師として年齢を重ねていくと、お客様が減っていくなどネガティブな面もあると思いますが、今のペースで、何十年も通ってくださっているお客様を大切に、サロンワークでも結果を出せるような美容師でありたいと思っています。

そして、日本らしいデザイン、東京らしいヘアスタイルを発信出来る様にやっていきたいですね。


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〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7−6 I Livビル 4F i liv

池戸裕二

池戸裕二

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最近は海外での仕事も頻繁で、サロンに不在のことも多いですが、1カ月に13日前後は銀座五丁目店におります。たくさんの現場仕事の中で得られた経験を活かして、素敵なヘアをつくります。
ありがたいことに「もっと早くに出会えていればよかった」とおっしゃっていただけることが多いので、「今までいい美容師に会ったことがない」という人にぜひお越しいただきたいです。
見た目とはギャップのある、繊細な技術とていねいな接客をお楽しみください。今のお客様の気分や空気感に合わせ、どんなシーンでも輝けるヘアスタイルをご提供します。

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